行政および供給サイド
供給サイドでは、素材業界を中心とした大きな仕組み作りが、企業ベースで一段と進行している。他方、アパレル業界及び行政レベルでは、議論は活発に行われているが、需要者対応という点では、業界としてのまとまった具体的な動きは鈍いといえる。アパレル業界でも活発に動いているのは、企業としての自己判断をふまえた動きである。こうした中で、岡山県アパレル工業組合が加盟する日本被服工業組合連合会とその傘下企業の動きは、議論を越えた具体的な行動となっており、インパクトは大きい。もちろん、これを支えている素材メーカー、副資材メーカーの開発力と協力があるからこそできているのであるが、フロンティアを開拓しつつあると評価し得る。
今回の調査事業で、供給サイドについて確認できたもう一つの点は、エコロジー関係の認証マークの混乱ないし乱立が見られるということである。以前であれば、行政が業界を指導して統一的なものを作ろうとしたであろうが、今日の行政の姿勢は、いろんなアイデアを民間に出させて、判断は市場に任せて、選別淘汰を行おうということであるから、これからもこうした混乱は、続くであろう。大切なことは、これに異議を唱えることではなく、確実に変化してきている需要者を振り向かせ、その支持を得ることである。そのために汗をかくことである。汗をかかないパイオニアはいないからである。この点で、一歩も二歩も先を行っている当該産地の役割は、極めて重要といえよう。 (大阪市立大学大学院教授・富澤修身)
まとめ
消費者の意識調査では内閣府の「循環型社会の形成に関する世論調査」、GPNの「グリーン購入アンケート調査」、産業能率大学の「エコ商品に関する消費者の意識調査」をみても確実に消費者の環境に対する意識が高まっていることがわかる。
内閣府の調査では「環境にやさしい製品が一般の製品と比べて割高な場合、何%までならやさしい製品を購入するか」という質問に対して、5%程度までなら高くても買うという人の割合は38.6%、10%程度高くても買うという回答が25.9%など、高くても買う人の割合は計69.9%に上る。
また、GPNの調査では価格の許容範囲について、「同等かそれ以下なら買う」が47%占めるが、「5%程度高くても買う」が30% 強、「10%程度高くても買う が15%」、「20~30%高くても買う」が2%で、半数以上は割高でも買う姿勢の消費者がいる。
さらに能率大学の調査でも「環境配慮で販売価格が上がった場合、どの程度許容できるか」との質問では77.9%が「1~2割」と回答。「3割でも良い」とする回答も3.4%あった。環境配慮型の商品なら割高でも構わないという姿勢の消費者の割合は合計で82.2%に上る。3つの調査から消費者の7割前後が環境配慮型商品の割高を認めだしてきているといえる。
企業の動きについてはトヨタ自動車、東洋紡、クラボウ、クラレなどの各社の環境政策があるが、20世紀に入った2001年あたりから新しい「地球環境憲章」の打ち出しが目立つ。グリーン調達はもとより、さらにゼロエミッション(廃棄物ゼロ)に向けた取り組みを視野に入れている。
行政の動きでは東京都、大阪府、岡山県、滋賀県などの環境行政があるが、琵琶湖の環境条例などで環境問題に早くから取り組んできた滋賀県が先行している。そのほか都道府県、 市町村でも環境に対する取り組みが活発化している。
教育現場でも夏休みのリサイクル体験や環境講座が増えつつある。エコ学生服の採用も2001年の入学期で全国の中学、高校で100校を超えた。同じくエコ体操服も100校以上に採用されている。
需要サイドのエコ商品の認識や購入姿勢は確実に高まってきているといえそうだ。