1.児島に伝わる匠の技
手のみ裁断とは、生地の上に型紙を置き、手のひらくらいの大きさの「のみ」を使い、型に沿って、直接生地を切り抜いていく技術です。明治期・大正期、児島では足袋生産が盛んでした。手のみ裁断は、この頃より伝わる技術といわれています。現在では、コンピューター制御による機械で、裁断する方法が一般的ですが、児島にはまだ、その匠の技が生きています。
2.「手のみ」裁断の特徴
延反した布を重ね、地の目、方向性を見ながら、型を入れて裁断します。残った生地にまた型を入れ、取れるところから、きれいに無駄なく生地を切り抜いていきます。機械裁断だと、どう無駄なく配置しても布の残り端が出てきますが、手のみ裁断はそういったロスが非常に少なくなります。また、小ロットの時には、すぐ対応できるため、時間短縮に役立ちます。
3. 熟練の技
数枚の布を重ね、流れるように手早く裁断していきます。簡単そうに見えますが、熟練の技が必要です。写真の匠は20年以上のキャリアを持ちます。右手、左手、効率よく裁断できるよう、「のみ」も特殊なものが使われています。児島でも、少なくなっている技術ですが、まだまだ必要とされている技術です。
4. 次世代に受け継ぐ
手のみで裁断した生地の断面。包丁ですぱっと切れるような感じです。布地を重ねるので、厚みが出るため、いかに直角に「のみ」を入れていくかが問われます。匠の技術は、お金では買えないものです。次世代を養成し、継承しなければならない技術です。
5.匠の手と「のみ」
手のみの刃は、自分自身で研いで手入れします。「刃はあまり薄くすると、カーブのとき暴れるし、厚かったら、布が切れない」。これこそ、経験がものを言います。匠の手は、爪の部分が、長年の仕事のため、平らになっています。今までの経験を物語る、いい表情をしています。
取材協力:明石被服興業株式会社